「転生した大聖女は、聖女であることをひた隠す」は、よくある異世界転生ものかと思ったら、同世界転生ものでした。
基本情報
タイトル | 著者 | ページ数 | 発売日 | Kindle価格 |
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転生した大聖女は、聖女であることをひた隠す1 (アース・スターノベル) |
十夜 | 328 | 2019/6/15 | ¥660 |
※ 単行本¥1320、Kindle Unlimited 読み放題対象 ¥0
あらすじ
騎士家の末娘として生まれたフィーア。
才能あふれる兄弟とは異なり剣の才能はない。
それでも子供の頃からの夢だった騎士を目指すため「成人の儀」を受けることを決意する。
「成人の儀」では、森に棲む魔物を狩ってその体内になる魔石を取って帰り、強さを証明しなければならない。
森に分けいったフィーアは、木の根元に血だらけになり今にも死にそうな黒い鳥の雛を見つける。
姉からもらった回復薬を雛に飲ませると、雛は突然吠え出しその姿をみるみる大きくし、フィーアの肩に食らいついた。
朦朧とする意識、焼けるような痛み、死を意識したその時、思い出したのは今はもうおとぎ話と化した大聖女の力を使いまくる前世の記憶だった。
記憶と共に戻る大聖女の力。
引き裂かれたはずの体は元通りに戻り、噛み付いてきた黒竜をも従えてしまう。
前世のフィーアは王女にして大聖女だった。
3人の兄王子たちと共に悲願である魔王討伐へ出かけ、ボロボロになりながらも魔王を討伐することに成功する。
戦いが終わった時、魔力はゼロだった。
そんな王女を兄王子たちは魔王の城に置き去りにする。
「お前、マジ目障りだ。『大聖女』って言われて、調子に乗っているんじゃねぇよ!」
置き去りにされた王女は、魔王の右腕と呼ばれた魔人に見つかり殺される。
死に際、魔神は侮蔑的な言葉を投げつけた。
「お前が聖女だから、こんな目に遭うのだ」
「聖女に生まれ変わったら、必ず見つけ出し、また、同じように殺す」
「そうだ、聖女だったから、殺されたんだ」
「聖女だと知られたら殺される」
かくしてフィーアは、聖女であることをひた隠し、騎士としての道を歩むのだった。
感想
異世界ではなく300年後に転生という形をとってるのは、ありそうであまりなくて割と珍しいのではないでしょうか?
300年後の世界では聖女の力が大幅に失われ、歪んだ形で継承されているのが、妙にリアリティを感じさせます。
どちらかといえばコミカルで笑いの要素が強いのですが、コミカルな部分に本格的なファンタジーノベル要素が微妙にいい具合にミックスされていてバランスがいいです。
全体的に登場人物のキャラはしっかり確立されていると感じましたが、中でもやっぱり肝は主役のフィーアです。
明るい。いや、明るいを通り越してバカかもしれない。。でも憎めない。
いわゆる天然キャラに分類されるでしょうか。
「大聖女の力」を隠しているはずなのに、自分のためだったり誰かのためだったりで「大聖女の力」を使ってしまっていて、結局隠していなかったりします。
ところが「大聖女の力」を使ったフィーア自身は上手く誤魔化せたと思っているわけで..
好感を持たれる方が多いとは思うのですが、フィーアが好きになれるかどうかが、この話にハマるかどうか分かれ道になるでしょうね。
文章はとても読みやすく、私は楽しく読めたので、ちょっとした空き時間に気軽に読んでみることをお勧めします。